正しい紳士服の選び方

身に着けているものはステータス?

よくある考え方に、身につけているものはステータスであるという考え方があります。その時に身に着けているものの「値段」や「価値」が、その人が「どれだけ稼いでいるのか」というステータスになるということです。

それはあながち間違いではないのですが、一介の会社員であれば特に気にする必要はないことかもしれません。むしろ、そのようなことを気にしすぎてしまうが故に必要以上に「バブリー」な格好になってしまうことは避けた方がいいでしょう。バブリーな姿でいることが求められるのは経営者や管理職など、「ステータス」を持った人です。

ここ10年近くでよく目にするようになったIT系の職種の人は、総じてそれらの「わきまえ」が欠けているように感じられます。それは10年ほど前に台頭した「ITベンチャー企業」が巻き起こしたITバブルによるものです。「ITは儲かる」という神話をもたらしたその一過性のバブルによって、ITベンチャーに勤めることはステータスであり、人よりも多くの給与をもらうことができることが誇りだったという人が沢山いたのです。それは商談相手に対しても「弊社はご覧のとおり儲かっているのでご安心ください」というような安心感を生んでいたのかもしれません。ですが、現在ではまったくナンセンスです。

ITのビジネスは一部を除いて一周りした感があり、どの企業もITに関して一定の必要な投資をし終わっているのです。企業に特化したシステム開発や、社内インフラの整備が一段落し、あとは「保守」しかないという状況にあります。そしてITが特別なことではないという状況が発生しています。ITであっても製造業であっても、小売であっても、当たり前のようにインターネットの技術を使いこなせるようになったのです。それによって、「ITが最新」というわけではなくなったのです。

どのような職種でも儲けるチャンスが平等にあり、特定の職種だからといってアドバンテージがなくなった「今」では、「私はIT系です」とムダに高い紳士服を身につける必要はないのです。むしろ、滑稽に見えてしまうのが「今」です。一介の営業マンが高級なライターや時計を身につけ、高級なスーツに身を包むというのは古くから慣習としてあったようではあります。不動産系の商談や接待の際などに、「儲けさせてもらっています」という証として高級なスタイルで決めるということがあったようです。ですが、現在ではそのようなバブリーなビジネスにおいても「倹約」することが計画的な人物とみなされることもあり、あまり薦められたものではないでしょう。

むしろ社員に対するシンボルとしての経営者のスタイルや、経営者対経営者の会談の際などに威厳を出す場合などには必要なことかもしれません。管理職に就いた人が部下に対して「出世するとこうなれる」と示してモチベーションを高める効果もあるかもしれません。

そのように現在では身につけるものはそこに「意味」がないといけないのです。そして不景気が長く続いたこのご時世ではムダに豪華であることは「滑稽」であり、「身の程を知らない」ということになってしまうかもしれません。身につけるものの値段、特にブランドものであればあまりそれが嫌味にならないように気をつけるべきでしょう。