正しい紳士服の選び方

ビジネスは「カタチ」から始まる

人の本質は「見た目」ではありません。どれだけ「カタチ」を整えても、その先の「仕事」ができなければ意味がありません。一番大切なのは実際の仕事でどうなのかという部分であることは間違いありません。

ただ、ビジネスのすべてが「人と人」の関係である以上、「初対面の時の印象」や「信頼できる相手なのか」という判断が挟まることは仕方がありません。突然仲良くなれるわけではないですし、人と人の関係はその関係の数だけ、発展の仕方があります。相手を探りながら徐々に関係を深めていくのか、それとも最初から相手を信用して100パーセントの信頼をおくのか、それはそのビジネスを担当している人、相手と直接関わりを持つ人、そのビジネスの形、利害関係などに左右されるのです。人間関係がひとつではないので、ビジネスの形もひとつではないのです。

世の中にはさまざまな人がいて、さまざまな嗜好を持っています。先進的なものを好む人もいれば、保守的な人もいます。さまざまな好みと考え方が交錯するのが現代社会であり、どのような人と出会うのかはわかりません。だからこそ誰と出会っても構わない「礼儀」というものがあります。礼儀と同時に、「形式」という枠組みでお互い不快にならないように配慮しあうことができるのです。それは「マナー」といってもいいかもしれません。「常識」といっても良いかもしれません。

それを体現する「スタイル」というものがあります。自分が身にまとうもので、その常識を体現し、「自分は常識やマナーをわきまえている」と相手に対して言外に伝えることで、「信頼してもらおう」と試みることができるのです。人の本質はそのような表面的な部分ではなく、実際は見た目がしっかりしていようが仕事ができるのかどうかはわからないものの、それ以前に「自分を受け入れてもらえるのか」という点から、すでに戦いは始まっているのです。

ビジネスは競争であり、ビジネスは容赦のないものです。お互いの利害関係が一致するのかどうかという前提部分、競争相手がもっと有利な条件を提示しないかどうかという部分、さまざまな要素が前提として存在して、そのビジネス上の関係が成立するのです。その中のひとつの要素として、「相手に受け入れてもらえるのかどうか」という部分は最初の関門でもあります。そのような関門を突破するために、自分のマナーや知性を「スタイル」や「所作」で体現するのです。それによってまずは信頼してもらおうとすることが大切です。
実際は、自分は仕事ができる、見た目で判断されると心外、本質を見てほしいというものはあくまでもこちらの「エゴ」であり、私たちの「勝手」です。そんな「勝手」が伝わる相手などは少ないもので、「実際に関係を気付くまで」は、人は冷たいものなのです。「なぜ受け入れてもらえないのか」ということに悩むのであれば、まずは自分のスタイル、所作、その他すべての部分において「関係を作る」に値する人物なのかどうかを自分で評価してみましょう。いくら機転がきいても、いくら賢くても、見た目が悪ければNGという人は多いものです。そのために自分を磨くことは、「仕事ができる」内に入るのです。わかる人にだけわかってもらえたらいいということでは、「仕事ができる」とはいえないのです。