正しい紳士服の選び方

スーツの色、黒は地味?明るすぎると派手?

スーツにはそんなに沢山の選択肢があるわけではありません。特に「色」に関しては、選ぶ余地などあまりありません。たとえカラフルなものが販売されていたとしても、自分の職場でそれを着ることができるかどうか、よくよく考えた方が良いのです。

自分が着ている衣服は、そのまま人に対して自分の存在やセンスを伝えるものです。自分がどのような感覚を持っていて、どのような意識でその場に臨んでいるのかを体現したものが、あなたのスタイルそのものなのです。「べつにどうでもいい、汚れていても、ボロボロでも良い」という考えでスーツを身にまとっているとしたら、それは相手に対して伝わってしまっているでしょう。「この人はいい加減な気持ちでここにいるのだ」という評価になってしまっているでしょう。

言葉だけではなく、「見た目」というものは人に対してさまざまな印象を与えます。人が人を見るとき、人が人に接するとき、お互いにそれぞれのスタイルでいるはずです。そのスタイルは「自分のセンス、知性、その場に対する考え」その他さまざまなものをにじませているはずです。それらをお互いに披露しあうのが「交流」ということになります。ただ話すだけではないのです。相手の事を五感で感じながら、「どのような人か」ということを判断するわけです。

単に衣服といっても、そこまでの意味を持つのですから、数少ないスーツの選択肢に対して迷うことも悪いことではないのです。私たちは自分のほんの些細なこだわりを積み重ねて、自分のスタイルを完成させています。その場に適した服はどのようなものなのか、相手は自分に対してどのような印象を持つだろうか、自分は相手に対してどのような印象を持ったのか、このスタイルであれば場は華やかになるか、真面目な空気になるか、どのようにして「自分」を演出したらいいのかを、じっくり考えるものです。

明るい色のスーツも、せいぜい「灰色」が限度だと思います。一般的なビジネスシーンでは、ピンクのスーツなどはまず受け入れられません。それではまるで漫才師の衣装です。黒や紺色から派生した階調に属する色が、ビジネスにおいては「基本」と考えてもいいでしょう。あまり明る過ぎると明らかに周囲から「浮いてしまう」ことになります。

周囲から浮いてしまうことで「自分は特別」というような意識を持ちたいのかもしれませんが、それは自分だけが考えていること、自分だけが価値に思えることかもしれません。人はそんな様子のあなたを見て笑っています。滑稽だからです。

「自分らしく」ということと、「その場を考える」ということはなかなか相いれないようでいて、簡単に同化できるものでもあります。「その場」を自分のこととて考えれば、どのような衣服でそこに存在すれば良いのかはおのずとわかるはずなのです。相手に明るい印象を持たせたいその「時」が、本当にその考えが適しているのかどうか、しっかりと考えた方がいいでしょう。自分が思っていることと、相手が感じていることは全然違ったりします。

それを「理解」することが、成長です。その場にどのように臨んだらいいのかがわかれば、その場に適したスタイルを選ぶこと自体が「自分」になるのです。