正しい紳士服の選び方

服は人間性を表す

人と接する際、その人の「すべて」が見えます。「すべて」というのは「全身」ということです。もちろんコミュニケーションの主体は言葉や表情です。ただ、それだけではないのです。

その人がまとっている雰囲気のようなもの、オーラのようなもの、言葉で簡単に表してしまうと「恐そう」、「強そう」、「優しそう」、「面白そう」、「爽やか」などといったさまざまなイメージは、その人の言葉や表情だけから引き出されるものではないのです。「その人」を構成するのはその時目に見えている「すべて」です。その「すべて」がその人であり、足元から髪型に至るまでのすべての要素がそれら「イメージ」を司っているのです。

私たちの身体、相手から見られている大部分は「衣服」で覆われています。衣服で覆われ部分が相手に対してなんのイメージも与えないわけがありません。「なんだか派手だな」であるとか、「なんだか地味だな」、「暗いな」というような印象は、私たちの衣服が相手に伝えたものなのです。つまり、相手がこちらを判断するための材料として「衣服」が挙げられるのです。衣服はそれほどまでに自分のイメージを左右するのです。

360度、全方位から見られているということを意識したいものです。あなたの後ろ姿、立ち姿、座っている姿、それらのすべてがあなたの「印象」を作っている要素なのです。それらは「それ」を目にした人に伝わり、「イメージ」として解釈されています。普段のあなたの様子から、あなたの「印象」が作られているのです。「本当はそんな人ではない」という場合も、それは関係ありません。相手にそう思われた時点で、あなたは「そう」なのです。「話してみたら違った」ということも多々あります。ですが、すべての人と話すわけもいきません。自分のことを理解してもらえるまでとことん話し合うということなどできないのです。

自分はこんな人ですと、人に対して与えたいイメージがあるのであれば、それを「外見」に込めるしかないのです。第一印象で「こんな人だと思った」という相手の印象を左右しよう思うのであれば、そのような見た目を体現するしかないのです。そして「そのような見た目」の八割は衣服で実現が可能です。さらに髪型、表情などで自分を演出するしかないのです。

そのようなことを通じて、人は自分を作り上げます。そして相手に対して「見たまま」の印象を与え、円滑なコミュニケーションを実現しているのです。そのようなことができるかどうかが、社会でうまく立ち振る舞うコツでもあります。面接に強い、営業に強い、商談に強いという人は、それらの「演出」が上手なのです。誰でも「話せばわかる」はずです。ですが、それだけでは不十分で、みんな「第一印象」でのスタートダッシュを決めているということなのです。

それが紳士服を最大限利用する方法です。自分がなりたい自分、見せたい自分を演出することで、仕事でもプライベートでも、「人との関わり」において有利にことを運ぶことができるようになるのです。ただ服を着るだけではいけません。「自分がなりたい自分」というものをしっかりと思い描くことが大切なのです。それによって生きていくうえで避けられない「コミュニケーション」を円滑に進めることができるでしょう。