正しい紳士服の選び方

スーツの痛み方

スーツを着用していれば、必ず痛むものです。永久に傷ひとつつかないスーツなどというものは存在しませんし、着るために買った以上、それは絶対に痛みます。

ただ、どのように痛むのかを知ることで、ある程度気をつけることで、スーツの劣化を妨げることはできます。人によって着る「クセ」が違いますので、痛み方もさまざまではありますが、大枠として捉えればおおよその「弱点」は知ることができるのです。人のカラダは「動く」ものです。当たり前ですが、私たちは日々カラダを動かして仕事をしています。歩くことがない日、カラダのどこも微動だにしない日などは、健康な人であればありえないのではないでしょうか。

その私たちのカラダのうちでも、「動くところと動かないところ」があります。基本的にカラダの「動くところ」には「関節」があるはずです。どのような運動も、この関節の稼働によってもたらされていることは誰でもわかることでしょう。つまり、着ているものもその関節に沿って曲がったり、伸縮しようとしたりするものなのです。つまり、スーツの中でも人のカラダの「関節」に接している部分は一番「動く」部分であり、劣化してしまう可能性が高い部分となります。

一番動かす関節のうち、衣服に覆われている部分として代表的なのが「ひざ」と「ひじ」です。この二箇所は私たちが生活する上でもっとも動かす頻度が高い部分です。歩くこと、腕を動かすことは、私たちが生きている中でもっとも多い「運動」のひとつでしょう。あとは「肩」もそうです。そして「腰」もそうです。私たちのカラダの動きを考えることで、スーツがどのように傷んでいくのかを想定することができるのです。

一番のウィークポイントは「ひざ」です。移動の基本は「徒歩」であり、職場でも自宅でもまずは「歩く」でしょう。そして「座る」ものです。そのすべての所作で、ひざの関節が動いているのです。その度に、そのとき着用している衣服の同じ場所も稼働しています。その衣服が「伸縮性のあるもの」であればいいのですが、そうはいかない場合、その関節の部分は折れ曲がり、そこを起点に「シワ」ができます。そして足を組んだりするとその部分の生地がこすれ合うのです。スーツの劣化の起点はそこです。パンツからまず、傷んでいきます。そのため、長くワンセットのスーツを着ることができるようにするために「ツーバンツスーツ」などが販売されています。パンツをローテーションさせることで、スーツの痛みを遅くしようとする試みです。

次に痛むのは「ひじ」の部分です。机に「ひじ」を置くことが多い場合、その部分の生地が擦れることがあります。そして、可動する部分のため、もちろん「痛む」ことになります。これはひじをあまり机にかけないということで回避できるかもしれません。ただ、「ひじを動かさない」ということは事実上不可能であるため、その部分に「シワ」は必ずできます。そして次にスーツの「袖」の部分を気にした方がいいでしょう。袖の部分がよく机に接している場合は、その部分が擦れて傷になることもあります。

ひとつひとつは普段の何気ない動きであり、避けようがないことです。なるべく数着のスーツを持つことにして、着回すことで一着一着の痛みを遅らせる工夫も重要かもしれません。スーツの痛みは「着ている時間」に比例します。