正しい紳士服の選び方

上司よりも良いスーツを着ても良い?

紳士服にはさまざまなグレードがあります。それはその衣服のブランドからはじまります。上を見ればキリがなく、どこまでも高級なスーツを探すことができます。

衣服にどれだけお金をかけるのかということは、人によります。人のセンスなどというものはバラバラで、価値観もバラバラです。だからこそさまざまなブランドがさまざまな衣服を販売しているのです。ただ、職場で着用するスーツなどは、「完全な自由」というわけにはいかないものかもしれません。職場では必ず「人に見られる」ものです。あなたが着用しているスーツを通じて、人はあなたのことを判断します。そんなに給与が変わらない同輩であれば、高級なスーツばかり着ているあなたに対して「金遣いの荒いヤツだ」という評価を下すでしょう。それだけではありません。あなたの給与を知っている上司も同じです。

その場に適した服装というものは、そのような「人の勘ぐり」を考慮したものでなければいけません。ただそこに、その衣服を着用した人がいるというだけではなく、「そのようなスタイルの人はこうなんだ」という憶測や推測が混ざるのです。そのような憶測や推測は、時間を経て「確信」に変わり、さらにはその人に対する「評価」に変わります。上司からの「評価」はそのまま「給与」に繋がります。その給与で、あなたはそのスーツを買うはずです。

高いスーツを着れば人に注目されるということは間違いではないかもしれません。ただ、その注目の「され方」が問題なのです。周囲の視線は高級スーツに身をまとったあなたに対する「羨望」だけではないはずです。むしろ、それ自体がその場で浮いてしまっているのであれば、「この人は変わり者だ」という評価になります。さらには、「なぜこの人はこんな場であんなに高いスーツを着ているんだろう」という疑問や、「場違いでみっともない」と影で笑うことになるかもしれません。

TPOに適した衣服というものは、完全な答えが出しづらいものではあるのですが、一般的なビジネスにおいてそこまで高級なスーツは必要ないのではないかと思います。もしかするとその高級なスーツで出したいものは「威厳」なのかもしれませんが、その「威厳」という人に感じられてはじめて成立するオーラは、実は「衣服」で出すものではないのではないでしょうか。

人は長年培ってきた経験と、積み上げてきた実績によって存在を重くするのです。その存在は後進や部下からは憧れや畏怖のような印象を持たれることになります。たとえ高いスーツを着ていなかったとしても、十分に威厳がある人もいるのです。

高いスーツを着れば「出来るヤツに見える」ということは一切ありません。それは「服を着る」のではなく、「服に着られている」考え方です。結局は自分の仕事、自分の所作、考え、日々の言動が大切です。それを積み重ねたものが「威厳」であり、「信頼」です。衣服を変えたからといって、突然できる人にはなりませんし、不釣り合いであるのであれば、それは周囲に違和感を与えることになり、それは羨望ではなく「馬鹿にされる」というまったく正反対の結果が導き出されることになります。

衣服をどのように選んでも良いのですが、それは「人が見る」ということを忘れてはいけません。